法律のお話し

 公益通報は国民の公益を守るための制度であり、公益通報者保護法は公益通報者に対する保護を目的とした法律です。この法律自体の有効性、問題点の詳細はここでは触れませんが、公益通報、内部告発を行うに当たっては最低限度の法的知識を知ることは必要です。
 ここでは、後述する公益通報制度、公益通報者保護法を理解しやすくするために、易しい法律のアウトラインを記載します。

 法律とはいかなるものでしょうか、簡単に言えば"決まり"ということです。アフリカや南米の奥地に居住する原住民達の社会では、事細かく、紙面に決まりを記載した法律、法文など存在しません。それはなぜか。答えは簡単です。彼らは単純な生活をしているので、善悪、風習、慣例などによる決まりはあっても、先進国の様な詳細、難解な法律は存在しません。必要がないのです。
 しかし、日本は文明先進国であり、人の価値観は多種多様、社会は複雑に入り組み、高度に専門化しています。すなわち、単純ではない。そういった社会においては多くの決まり事を決めておかないと、収拾がつかなくなる。その決まりを明確化したものが法律です。我々は多くの法律により行動を規制され、また、反面行動の自由が確保されている。いわゆる法の支配を受けています。各場面ではそれぞれの法律が決まりを規定し(人を罰するなら刑法、訴えるなら、訴訟法......。)我々は法律に従い諸般を行う。公益通報保護者法は、公益通報を行う場面における法律です。

 法律は明文化されています。(紙に書いてあります)
例えば。刑法235条、窃盗罪【他人の財物を窃取したる者は窃盗の罪と為し十年以下の懲役に処す。】この法律があります。これをバラバラにしますと、−他人の−財物−窃取−となります。すなわち法律を構成する一つ一つの要素が構成要件(要件)というもので、発生した事案が法律に該当するか、一つ一つの要件を満たすかで、法律の適応可否が判断されます。そしてその周囲では、法律に当たるとしても違法性があるのか、責任があるのか、などの諸般が斟酌され、具体的な法律上の判断がなされます。
 しかし、これが非常に難しい。だから弁護士(法曹)などのプロがいなければ出来ないのです。例えば窃盗罪の財物に電気は含まれるか....一般的に価値のないものは含まれるか...財物をどの程度占有したら、窃取したと言えるか...一時的に借りるつもりで、自転車を勝手に乗り回した場合は....
 現代の日常では多種多様、あらゆることが起こります。その一つ一つが法律に該当するのか、どの法律の何処が根拠規定なのか。結果と原因に因果関係があるのかなどの判断が実に難解。そして、その先駆けの判断材料として裁判所が下した例がいわゆる判例です。

 公益通報制度や公益通報者保護法は、公益通報、内部告発をする場面における法律です。要するに

 これから公益通報、内部告発を行う内容、事案が公益通報制度に該当する公益通報(内部告発)に該当するかを判断しなければならない。そして、公益通報者保護法で守られるか否かの判断をしなければならないのです。

公益通報者保護法は、文字どおり公益通報者を保護することが法律の立法趣旨です。大局で考えれば現在、公益通報制度は有効に活用され、動いているのか、公益通報者保護法にしても同様のことで、この法律が目的を果たす為に有益な法律か、極端に言い換えるならば悪法か否か。
具体的には、通報する事案が、どの法律(法令、規定)に違反し、公益通報の事案として適正なのか、通報者は公益通報者保護法で守られるのか。守られるための条件は....実に多くのことを考えざる得ないのです。

公益通報者、内部告発者に共通する心理は、公益通報行為自体に対する不知、不安。公益通報から派生する通報者および周辺(家族など)に及ぶ影響。通報、告発したことにより具体的事案の改善がなされるか否か、通報者、告発者に危害、害悪がおよばないようにする自己保身の心理です。

私は、公益通報、内部告発の経験から、現時点における公益通報、内部告発はあらゆる面で圧倒的に公益通報者、内部告発者にとって不利であり、現時点における公益通報者保護法は悪法であるという私見に達しました。これは、法制度、法律に包含される諸問題点からの視点からではなく、経験者が肌で感じた経験から得た結論です。
 実際に公益通報制度は実質的に機能していないのです。その根本は公益通報者保護法自体に多くの問題があるからです。そして、公益通報を受ける行政自体に大きな問題がある。これが現実です。


以上を読むと、公益通報、内部通報なんてむずかいからやめておこう、泣き寝入ろう....と考える方もおられるかも知れません。しかしながら、この解説、セクションは公益通報制度や公益通報者保護法、問題点の解説に入る前段階で導入として記載したもの。心配要りません。

公益通報、公益通報者保護法に苦しめられた、経験者である私は、諸事情を体験、経験しております。だからこそ、公益通報、内部通報をこの状況下でも支援し得ると考えております

公益通報の注意点、留意点、ポイントなど各解説をお読み頂ければ、公益通報、内部通報が行えると考えます。少なくても、通報者にとって有益な情報を提供し得ると考えております。

公益通報、(内部告発)はあくまで国民の公益を保護する行為なのです。臆することはないのです。正しい行為なのですから。